A.Hさん

「郷に入っては郷に従え。がむしゃらに多くを吸収した海外生活。」

A.Hさん
出身高校

頌栄女子学院

在籍大学

慶應義塾大学 文学部

海外滞在歴

イギリス(9歳〜12歳/4年間)

父の仕事でイギリスへ。現地のインターナショナルスクールに入学

イギリスでの生活はどうでしたか?

メーカーに勤めている父の転勤の都合で、小学3年生の夏から4年間、イギリスに住んでいました。 現地では1クラス10人程度、1学年2クラスの小さなインターナショナルスクールに通っていました。 公立の現地校だとイギリス人だけの環境になることを考慮して、両親がインターナショナルスクールに通わせてくれたようです。 日本人は少なかったですが、インド人・中国人・トルコ人など様々な国籍の人と一緒に過ごしました。

最初の1年間は広い食堂で一人でご飯を食べていました。特に寂しいとか辛いといった感情はなかったのですが、初めての経験でした。 そのこと自体に違和感はありませんでしたね。ご飯の量が多かったのが大変でした(笑)

学校までは母が車で毎朝毎夕、送り迎えをしてくれていました。当時のイギリスでは法律で12歳未満の子供は一人で行動してはいけなかったので、 何をするにも母親と一緒でした。学校の行き帰りはもちろん、塾の行き帰り、ちょっとした買い物など、 学校にいるとき以外はずっと母親と一緒に過ごしていました。引っ越した当初は様々な手続き等もあり、 母も英語はできなかったので、最初の一年くらいは非常に苦労したそうです。

小学校は学校行事が多く、イギリスの学校ということもあり、チャリティを開催するためのお祭りがありました。 おとぎ話にでてくるキャラクターの格好をするために、母親がシンデレラのドレスをつくってくれたり。 インターナショナルの学校なのでいろんな国の格好をしてきたりしていました。母も楽しんで参加していたようです。

アルファベットの読み書きも出来ない状態で渡英!毎晩夜遅くまで宿題に取り組む日々…

英語はどのように習得していったのですか?

アルファベットも読めない・書けないという状況で渡英しましたが、半年程で英語を聞き取り、内容を理解出来るようになりました。 しかし、何を話しているかは理解出来ても、それに対して答えられず、最初の1年は周りとほとんど話しませんでした。

学校では英語の特別授業があり、日本語を使いながら英語を勉強したり、イギリス人の家庭教師の先生にみてもらいながら英語を学んでいきました。 特に家庭教師の先生は作家もなさっていて、非常に楽しく勉強出来、1年経ったころには周りと普通にコミュニケーションがとれるようになりました。

英語面・勉強面で苦労したことはありますか?

英語が分からなくても、宿題は周りと同じ量が出ます。毎晩遅くまで父親に聞いたり、家庭教師の先生に教わりながらこなしていました。 性格的に学校の課題をおろそかにすることが出来ず、「求められたものにはきちんと答えなければならない」という気持ちでした。 周りの友達と比べても、必死に頑張っていた方だとは思いますが、「もうこれでいいや」といった気持ちには不思議となりませんでした。

イギリスの学校での勉強はどうでしたか?

今、振り返ってみて感じるのは、授業を聞いた上で、何かしら自分なりのアイデアが求められたな、ということです。 その部分は日本とは全く異なると思います。読書感想文一つにしても、スタイルから自由。絵日記風にしたり、新聞風にしてみたり。 また、年に数回「プロジェクト」と呼ばれる授業があって、例えば「ギリシャ神話」や「宗教」といったテーマについて自分達で調べて絵を書いたり、 冊子を作成したりしましたね。

帰国後は充実した中学・高校時代。勉強にも積極的に!

中学1年生の時に、帰国されたとのこと。帰国してから現在に至るまで、日本での学生生活はどうでしたか?

日本語は問題ありませんでした。イギリスにいる頃から、家族内では日本語で話していましたし、友達のお母さんと話す時は意識して敬語で話すようにしていました。 「自分は敬語も話せる!」という変なプライドもあったのだと思います。

特段大きなカルチャーショックというものもありませんでしたが、中学に入学してからのこと。 数学の授業でノートを持っていなかったので「母が買ってきていないのでありません」と挙手して言ったところ、 先生には「自分で買ってきてください」と少し怒った様子で言われ、周りの子達も少し変な目で見てきたんですね。 しかし、イギリスでは買い物など、一人で行動するという概念そのものがなかったので、 当時の私は「なんで先生は少し怒っているんだろう」と疑問でした。今でも仲の良い友達からは「最初変な子だったよね」と言われます(笑)

中学生の終わりの頃にふと人間関係のことについて考えるようになりました。イギリスにいた頃にすごく仲良くしていた子達と連絡をとらなくなり、 人間関係ってこんな簡単に終わってしまうのかな、と。それからは浅く広くというような付き合いはしないようになり、 本当に一生つき合っていける仲の良い人たちだけで過ごしたいなと思うようになりました。

勉強に対しては、イギリスでの経験から抵抗がなくなり、積極的になりました。高校生時代も周りの友達と切磋琢磨しながら、 充実した高校生活を送りました。大学受験では慶應と早稲田に合格しましたが、文学部でありながら、 文学以外のことも幅広く学ぶことのできる慶應を選び、今は人間科学を専攻しています。今は文化人類学に興味があり、 日本社会における同性愛について研究しています。これもイギリスにいた時の記憶というものが少しきっかけになっていて。 イギリスはパートナーシップ制が認められており、街でゲイのカップルを見かけることは普通でした。 しかし、日本では表立って目に見えることはなく、なぜなんだろうと思ったのがきっかけです。

何事もこだわるように。やればやるだけ自分にかえってくる。

海外で生活したことで、今の自分に影響を与えているな、と思うことはありますか?

「こだわる」ことですね。イギリスの学校では、成果にいたるプロセスや努力を評価してくれたので、 細かいところまでこだわるようになりました。宿題一つとっても終わるまで寝たくない、と自分が納得いくまでやりきり、 負けず嫌いな性格も強くなったと思います。中学校の卒業研究を「パックスロマーナとアッピア街道」というテーマで書いたのですが、 結論部分を父に手伝ってもらいました。結果、先生にほめてもらったのですが、 後々それは自分の力じゃないと悔しくなって泣いてしまいました(笑)何事も自分でできないと悔しい、 自分一人でどこまでできるか、ということを強く求めるようになりました。

また、イギリスでの経験のおかげで勉強が好きになったのだと思います。勉強に対して抵抗がなくなり、 やればやるだけ結果としてかえってくるという実感を得られたことが大きかったのだと思います。 帰国子女であることには良いとも悪いとも思いませんが、父親についていき、英語を話せるようになり、 帰国後自分の得意なものとして英語を認識できるようになった。英語を話す自分がすごく好きですし、 自分が帰国子女であることに関しては両親に本当に感謝しています。思っていたよりは、 英語力は持続できていますが、やはり昔の自分の書いたものを見ると、昔の自分の英語力にびっくりします。 これからも英語を話す機会にはたくさん触れたいですね。英語を話している自分が好きですし。

これから海外で生活する後輩へ向けてアドバイスをお願いします。

何の役にも立たないアドバイスかもしれませんが、あるがままを受け入れて流れに身を任せればいいと思います。 そこが住む場所だから逃げられないですしね。「郷に入っては郷に従え」です。今、思い返すと当時はひたすらに努力していたのだと思いますが、 当時は努力しているとすら思っていませんでした。海外で過ごした時間は本当にがむしゃらに、いろんなものを吸収して、非常に成長した期間でした。