TCK Workshop通信 Vol.12

2016年10月30日 山下 光
中学受験

こんにちは。TCK Workshopの山下です。

社員のほとんどが帰国子女であるTCK Workshopですが、私は帰国子女ではないので、現在は国内での指導を担当しております。

指導させていただいているのは、主に中学受験を目指す小学校高学年の子どもたちで、彼らは「志望校合格」という大きな目標に向かって、日々勉強に勤しんでいます。

私にとっての中学受験は、今の人生にとても大きな影響を及ぼしている経験だったと今では思います。私の地元の中学校は、生徒の素行に関して特に悪評高いというわけではなく、一般的な公立中学校並みでした。しかし、たまたま私の小学校の同期(学校が終われば一緒に駄菓子屋に行って日がな一日遊んでいた友達も含む)がかなりやんちゃをする世代だったそうで、体育祭が暴行騒動に発展する恐れが高いため開催することができないほどだったようです。焦

当時の私は友達に流されやすい性格で、母に受験勉強を強制されていなければ、十中八九、同期と一緒になって悪行三昧していただろうなと思います。今のような、順風満帆とは言えずとも、満足した生活は送れていなかったのではないかなと思います。両親に対しては、今は感謝の気持ちしかありません。

しかし、受験勉強をしていた当時の私は「成績が悪いと怒られるから勉強せな」という気持ちでしか勉強していなかったので、ポジティブなやる気はまったくなく、ずっと中途半端な成績を叩き出していました。母に「母が志望する学校へ合格する」という目標を押し付けられていたからでしょう。

親が自分の信じる幸せを子に求めることは当然だと思います。母は「息子のためになる」と信じて、なかなか勉強しない僕を叱っていたのでしょうが、小学生の私がそれを理解することは到底できず、ましてや、後の人生で「あの時、受験させてくれてありがとう」と思える日が来ることなんてまったく想像できていませんでした。

私が指導させていただいているお子様は、みな当時の私と同じように「志望校合格」という大きな目標に向かって勉強を頑張っています。しかし、その目標は、本人が、本人の希望を叶えるために設定した目標なのかどうかといえば、答えはNOでしょう。

長期的な視野で物事を見定め、将来について考え、目標設定ができるお子様はごくわずかです。大抵のお子様は、両親が信じる幸せを達成するために必要な行動を(表面上)取っているに過ぎず、本人の意志がそこにはっきりと介在するということはあまりないでしょう。「受験なんて本当はしたくない」「こんなしんどい思いをして受験したくない」と思っていても本音を言えないのは、理解はできていなくとも心のどこかで、両親が自分の幸せを思っているからということをわかっているからではないでしょうか。

また、中学校受験における「志望校合格」という目標は、大学受験等を経た私達にとっては一つの通過点に過ぎませんが、この先の長い人生を想像する力がなく、その時その時を全力で生きているお子様からすれば、大人が考える幸せへのたったの1ステップはとてつもなく巨大で、果てないものに他なりません。そんな目標を押し付けたところで、お子様がその本懐を理解し、真剣に頑張れるかといえば、それは到底無理な話です。

私が指導の上で心がけているのは、受験合格どうこうというのはひとまず置いておき、「すぐできる目標を自分で作らせ、必ず達成させる」ということと、「達成できたらちゃんと褒める」ということです。すぐにできる目標というは、「自分でゴールを明確に見定めることができる目標」で、それを達成していく作業は、受験合格という道を一歩一歩、自分の意志で踏み出していくことです。それができなければ、巨大すぎる目標を目の前にして一歩も踏み出せずに立ち尽くしたままになってしまうでしょう。そして、自分で決めた目標を自分の力で達成すればちゃんと褒められるという経験は小学生にとって欲しいゲームが手に入ったというような即物的な幸福感とは別次元の幸福感を感じられるものだと思います。

受験合格を見定めている親御様には、お子様の成績が少し上がったところで「自分の子供はまだまだこんなものじゃない」と思ってしまいがちなように思いますが、前述の通り、それは問題ではありません。親としては当然で、そういう期待がないとお子様も何を目標に頑張っていけばいいのか迷い始めるはずです。

その親御様の子の幸せを思う気持ちを、親の期待に応えたいお子様が理解し、頑張れるように、私たちがお子様の精神面をサポートしていくことが最も大事なことだと思っております。